東京地方裁判所 昭和51年(ワ)10765号 判決 1980年1月30日
原告
片山達也
被告
甲野花子
被告
山口喜代子
右両名訴訟代理人
児玉稔明
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実《省略》
理由
一原告の甲野に対する債権<省略>
二被告甲野に対する請求について
1 甲野が、昭和五一年一〇月二九日、被告甲野に対し、財産分与として本件土地建物を譲渡し、同年一一月八日、千葉地方法務局市川出張所同日受付第六四三八九号をもつて所有権移転登記を経由したことは、当事者間に争いがない。
2 原告は、右の財産分与が詐害行為に該当すると主張する。しかし、離婚に伴う財産分与は、その制度の趣旨からみて、当該財産分与が民法第七六八条第三項の規定に反し、不相当に過大であり、したがつて、それが財産分与に仮託してされた財産のの処分であると認めるに足りる特別の事情の存在しない限り、詐害行為を構成しないものと解するのが相当である。そして右にいう特別の事情は、詐害行為の取消を請求する債権者において、その存在を主張、立証すべきものである。
これを本件についてみるに、右にいう特別の事情の存在を認めるに足りる証拠はなく、かえつて、<証拠>によれば、「被告甲野は、昭和三二年四月二九日、甲野と結婚した。甲野は同三八年頃から酒色におぼれ、被告甲野をかえりみなくなり、同四二年三月二三日、長男和永が出生してからは、家に寄りつかなくなり、同四五年頃から吉永さだという女性と同棲し、自宅には週に一度帰るといつた生活を続けていた。被告甲野は、右のような状況にあつたため、昭和五一年春、離婚を決意し、同年九月千葉家庭裁判所松戸支部に離婚調停の申立てをした。甲野も、右調停の申立てがされたことにより離婚を決意したため、同年一〇月二九日、協議離婚が成立し、即日、その旨の届出がされた。右離婚に際し、甲野は、被告甲野及び長男和永の生活の本拠である本件土地建物を被告甲野に財産分与として譲り渡すから、被告甲野において長男和永の養育をしてほしい旨要請した。被告甲野は、右の要請により、本件土地建物を譲り受けるとともに、長男和永の親権者、監護者となることに同意した。」ことが認められ、右認定の事実関係のもとでは、本件財産分与は、民法第七六八条第三項の規定を逸脱した不相当に過大なものではないと認めるべきである。
3 以上によつて明らかなように、原告の被告甲野に対する請求は理由がなく、棄却を免れない。<以下、省略>
(川嵜義徳)